千回以上梳かすとか、黒ごまを九回蒸して九回乾かし、粉末にしてナツメの種をペースト状にしたものと練り合わせたものを九回服用するとかさまざまたが、大豆の煎汁や水銀などで黒く染める方法も載っている。白髪染めは、『平家物語』にも、七十歳を超す老将斎藤実盛が、老いを隠すために髪を染めて戦場に出るというエピソードもあり、実際に行われていたようだ。しかし洗い流すとすぐ取れてしまい、当時の白髪隠しとしてはカツラが主流たった。それとても贅沢品であったし、外れやすいものでもあっだろう。昔の人が、よほどの恋多き美女でもない限り、四十過ぎて恋愛する人が少なかっだのは、手軽な白髪染めがなかったために、老いを早くに自覚していたためではないか。その意味で優れた白髪染めは、恋愛可能な年齢幅を著しく広げるのに役立った。私はそう確信する。
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