アーカイブ

光と闘いつつ美しい肌をつくる手法

「メイクにも限界はあり、光のあたり方や、その加減でメイクした顔の見え方が大きく変わります。だから照明は命だと思っています」ヘアーメイクアップアーティストの田中宥久子氏は30年以上にわたり、映画やテレビといった映像の制作現場で仕事を続けている。同時に、16年かけて開発した美容法が、顔の筋肉を鍛え、肌本来の美しさを取り戻す「造顔マッサージ」だ。斬新さと手軽さ、そして高い効果が評判を呼び、多くの女性から支持を集めている。どちらも美を追求する仕事だが、映画やテレビの現場には、多数の人間がかかわる醍醐味と苦労がある。そのなかで、「私の仕事は俳優の究極の美しさを表現すること。それが使命です」と強調する。田中氏が目指すのは映像を通しても肉眼で見ても美しい肌だ。「映像の世界はごまかしが利きません。化粧品を塗り重ねればいいわけではなく、いかにナチュラルに見せることができるかが大切。そのときに、メイクは彩度ではなく明度をどう扱うか、白から黒のグラデーションをどう取り込むかが勝負です。光の基本も明度ですよね。光の明度が足りないならメイクで明度を上げる、補完し合っているのです」。照明も、ただあてればいいというものではない。「照明が強すぎると、黒目と鼻の穴しか映らないでしょう(笑)。顔のしわをぼかすのに弱い光がいい場合もある。といっても、物語の展開に照明の演出も合わせるので、そう都合よくはいかない。シリアスなシーンなら監督は陰影のある画面を撮りたいし、照明監督(技師)もそのようなライティングを考えますよね。でも、陰影というのはたいてい、人を醜く見せる。そんなときはもう闘いです。『照明さん、肉眼で見るときれいなのに、画面に映ったらなんでこんなに醜いわけ?』なんて、ほとんどけんか腰」。