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手術を二回受けなければ治らない

二〇〇二年三月のミラノのショーで、一〇センチ・ヒールを履いたイギリス人モデルのミシェル・デスワートが、ステージ上で足首を捻って転ぶアクシデントがあった。いったんは起き上がったもののまた転倒し、あきらめて裸足で歩いたデスワートだったが、同じ晩にはヴェルサスのショーも控えていた。しかし、ショーのスタイリストから、ハイヒールが履きこなせないなら降ろすと迫られ、こちらは何とか転ばずにやりとおしたのだった。一九九七年には、元スパイス・ガールズ(イギリスのセクシー系R&Bシンガーグループ。エマ、メラニーB、メラニーC、ヴィクトリア(現ベッカム夫人)の四人組(結成当時のメンバーだったジェリーハリウェルは途中脱退)。デビューから二枚のアルバムのセールスが四〇○万枚を越える大ヒットとなった)の「ベイビー・スパイス」エマ・バントンがトルコでのテレビ番組収録中に一〇センチの厚底靴で転び、足首と手首を捻挫するという事件もあった。二〇〇〇年二月、ネバダ州のウェイトレス集団が〈私の足にキスして〉というキャンペーンを展開した。ウェイトレスには最低六センチのヒールを履かせるというカジノが多いため、彼女たちはそれに反発したのである。ラスベガスのカクテル・ウェイトレスになって二一年というワンダ・ヘンリーは、ハイヒールを履かされることが多いため、「ウェイトレスは血染めの靴で帰宅することもあるんです」と『ラスペガス・サン』紙に語っている。ラスベガスのマギー・カールトン上院議員は、ウェイトレスからの訴えが相次いだため、業界のドレス・コードに従えない「健康状態」を理由に雇用主が労働者を懲戒・差別することを禁ずる法案を出した。二〇〇一年三月には、ファッショナブルすぎて悪名高いシンガポール航空が、安全のため、離着陸時に女性フライト・アテンダントのサンダルをデザイナー・シューズ(ピエール・バルマンがデザインした、クロム・バックルとアンクル・ストラップ付きのスリングバック)に履き替えさせると発表した。台北での墜落事故から生還したフライト・アテンダントが、会社指定の爪先のおいたサンダルが脱げて飛んでいってしまったため、裸足で瓦傑の中を歩かなければならなかったと話したからである。次いで二〇〇二年一月には、華奢なサンダルを履かされたせいで足の指が変形したとして、同社の元フライト・アテンダントが一〇万ドルの訴訟を起こしている(この会社、やたらと靴の問題が多いような……)。彼女の言い分では、手術を二回受けなければ治らないということだった。