フィールドとデータ収集法観察対象としたのは、東京都内のさくら保育園(仮名)4歳児クラスに入所した中国人男児の李大毅(仮名)である。大毅は、4年前に来日した父親と一緒に暮らすために、5歳2ヵ月のときに母親と一緒に来日し、2ヵ月後にさくら保育園に入所した。さくら保育園は商業地区にある公立の認可保育園(0歳児から5歳児までの6クラスが設にされている)で、調査を実施した1993年当時、幼児87人中17人が外国人幼児であった。大毅は保育士や他の幼児から、「おおきちゃん」と呼ばれていた。データ収集法として、「エスノグラフィーの手法」を採用した。エスノグラフィーの手法とは、人々の日常世界を人々の視点から読み解くための手法で、人々の生活に参加しながら、人々の言動をそれが生起した文脈ごと包括的に記録する点に特徴がある。観察期間は、大毅が入所した直後(1993年10月)から退所(1994年4月)までの約7ヵ月間である。午前中の自由遊びと食事の場面を中心に、原則として2週間に1度定期的に観察した。フィールドでは、子どもに話しかけられたときと子どもが危険に直面したときにだけ反応する「消極的参与の立場」をとり、保育園の日常生活の流れをできるだけ妨げないように観察することを心がけた。また、観察と並行して保育士と大毅の父親との「インフォーマル・インタビュー」も実施した。観察では、ビデオ撮影・写真撮影・テープ録音がいっさい許可されなかったため、B6判のカードを常に携行してフィールドで見聞きした事柄を可能なかぎり言きつけることに努めた。観察後は、観察時間の2倍以上の時問をかけて、その日のうちにフィールドメモをフィールドノーツに書き直し、理論的・方法論的な気づきを書き留めることに努めた。
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